もうひとりの「創造神の種」
- 声:川村万梨阿(美奈)
海外出張が多いという父・広和さんと、
ガイが幼い頃に病死した母・冴さんは、
アニメ版では出番がありませんでした。
しかし小説版では、シュラトの「夢」として、
冴さんのお葬式のエピソードが出てきます(第1巻第3章)。
その中の、正座して下を向いたままでいるガイの台詞で
とても印象に残っているものがあるので、ここに少し引用します。
この台詞から、幼いガイの母親に対する想いと、「ボク、今、後悔してる。母さんともっといろんな話をしておけばよかったって……。学校のことや、道場のことや、ウチのことや、それに修羅人のことを!」
引用:小説版(スニーカー文庫版)第1巻第3章より
彼にとってその頃(同じ「夢」のなかの野良犬ボロスのエピソードより、
母の死は同じく3年生か、もしくは4年生ぐらい?)、
すでにシュラトがとても大切な存在であったことが伺えます。
この後、ガイはシュラトに抱きついて声を上げて泣いてしまうのですが、
このあたりはシュラト&ガイの名場面のひとつだと思います。
全編を通じて、ガイがここまで感情をあらわにするシーンは少ないし、
家族関係の描写も日高家ほど多くはないので、
よけいにこの場面は印象的でした(子どもの涙には弱いのです)。
そして黒木家にはもう1人、ガイの3つ違いの姉である美奈さんがいます。
(ただし、小説版「創世への暗闘」では5つ違い)
彼女も出番は少ないし、シュラトの家族に比べたら
それほど重要なキャラであるとは思っていなかったのですが、
どっこいOVA「創世への暗闘」ではすごいことになっています。
見る前と見た後では彼女に対するとらえ方が大きく違ってしまいました。
「ああ、やっぱりね」な部分もあったのですけれど。
OVAにおいての美奈さんは、
ガイやシュラトと同じく「創造神の種(=素質を持つ)」とされています。
その小説版(著者は関島眞頼さん)ではさらに、
「シュラト・ガイ・美奈さんの3人の魂が
常に親子や兄弟、親友といった関係で転生を繰り返してきた」
というエピソードが追加されていました(下巻「汎説 転生秘録」より)。
が、ここで疑問がひとつ。
それでは、「大戦」の時の美奈さんは、いったい何者だったのか?
……と考えてしまったのは私だけでしょうか?
先代修羅王と先代夜叉王のすぐ近くに「美奈さん」が存在していたのかも知れませんが、
何だか、OVAの設定が無理矢理でいかにもとってつけたもののように感じられて……。
「創世への暗闘」がいまいち胸にすとんと下りてこないのはこのせいかなぁ、
と自己分析しています。
うーん、これに関しては、
「OVAとその小説版が必ずしもイコールではない」ということもあるので、
(関島さんも小説化の際に「趣味に走った」とか)
ここで語るのはこれくらいにしておきます。
OVAを見る前に抱いていた彼女のイメージは、
典型的な美人というか、ずばり「きれいなおねえさん」。
ガイが「麗人にありがちな冷たさがなかった」(小説第3巻序章)のに対して、
彼女は弟よりかはそういった性質のある人、という印象がありました。
優しいんだけど、さらりとした感じで。
決して冷たいわけではないのですが。
サティさん&レンゲちゃんの姉妹と、育った環境は少し似ているかも知れません。
でも、あのお姉さんが妹にべったりな感じ(私にはそう見える)なのに対して、
美奈さんは自己というものを弟とは切り離して確立している人かなぁ、と……。
弟とは仲が良いし、面倒見のいいお姉さんだけれど、
あんまりべたべたした感じがなかったんです。
弟が優等生で、あんまり手がかからなかったからかな。
(レンゲは、そのお転婆っぷりで
サティさんに心配ばかりかけていたみたいだけれど)
年もそんなに離れているわけではないので、
母親的な役割を強要されたり意識させられたりすることも、それほどなかったと思うし。
ただ、自覚のないところで、弟に対する一線を越えかけた愛情はあったかもなぁ。
弟の親友であるシュラトに対しても、もうひとりの弟のように愛情を持っているけれど、
同時にささやかな嫉妬心をも抱いている、とかね。
小説第1巻の序章でも、そんな台詞がちらりと出ていましたよね。
でも、それが表に出てくることはきっとないだろうと思っていました。
さて、問題のOVA。
美奈さんは弟を強く想うあまり、
その創造神の種としての能力によってガイの肉体を生み出し、
そこへシュラトと同化しているガイの精神を引き寄せて、
ついにはガイを復活させてしまいます。
そして、
「弟は……ガイはもうどこへも行かせない。
私はガイと一つになり、新たなる宇宙を……創る!」(第6巻)
という野望を持つ……、ごく簡潔にまとめてしまうとそんなお話です。
また、OVAオリジナルキャラとして登場する調和神スクリミールについては、
美奈さんの一部とすべきかも知れませんが(理由はOVAを参照のこと)、
このコンテンツではあえて独立した別キャラとして扱います。
なので、ここでは触れません。
率直にいうと、TVシリーズ(小説版含む)の美奈さんとOVAの彼女は、
私の中では今でもうまくつながっていません。
それらからは独立した作品として見ても、
この美奈さんのことはあんまり好きになれないなぁ、というのが正直な気持ち。
自分と一体化して創造神となることを拒んだ弟に対し、
「私の気持ちがわからないの!?」
と叫ぶ彼女ですが、何だかものすごく勝手な感じがしてしまって……。
でも、彼女のそういう、幼稚ともいえる部分は、
全て弟恋しさから来るものなんだろうな……。
うーん、やっぱり美奈さんは、
ガイのことを「弟」ではなく「男」として愛していたのではないかなぁ……。
……と自分の中で整理できそうだったのに、
シュラトが何やら中途半端にフォローしてるからなぁ(特に小説版)、
そこも実は引っかかっています。
私がOVAをラストまできちんと見たり、その小説版を入手したのは、
その発売からかなり時間がたってからでした(2001年)。
発売当時のアニメ誌には、スタッフによるコメント等が掲載されていたのかなぁ、
と思うと、その頃一時的に「シュラト」から離れていた自分をちょっと後悔。
いや、逆に自分の目だけで見ることができて、良かったのかな?
この黒木美奈という女性について、未だにうまく消化できずにいるので、
現時点で私が彼女について述べられるのはこれくらいです。
うーん、ごめんなさい。
ところで、シュラトとガイの「日高」&「黒木」という姓は、
やはり(ソーマの)「白黒」や「陰陽」「光と影」etc.から連想して
つけられたものなのでしょうか?
今さらお聞きするのもはばかられるような質問ですが、
私が気付いたのはわりと最近です。どうなんだろうなぁ。
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